第2章 昔馴染
「まあ、そんな事が?」
ころころと鈴の音の様な柔らかい笑い声をもらす黒髪の女性に、俺はありえないだろ? と口先を尖らす。
「どいつもこいつも勝手な事ばーっか言ってさ、ムカつくったら。何が一番ムカつくってうちのじっちゃんだって。孫娘を何だと思ってんだ? けしかけるのは結構だがもうちょーっと考えてほしいよな」
女性━━緋真がいれてくれたお茶をすすりながら溜め息まじりにぼやく。そんな俺の愚痴を彼女は柔らかい微笑みを見せながらうんうんと相槌を返してくれた。
彼女と出会ったのは俺が一番隊の隊長に就任したばかりの頃。流魂街を巡回してい時に出会った。軽いいさかい事で負傷した彼女を助けたのが始まりだった。
流石にそのまま放っておく事が出来ず、傷の手当ても兼ねて一番隊舎へ連れて帰って来たのは良いものの……。
「もうさ、ズバッと式でも結納でも挙げちゃえばいんじゃね? あのボンクラに任せたままだったらきりないよ。いっそ緋真の方から積極的に行ったらどうさ」
「それは……」
「や、簡単じゃないのはわかってるけどさ。だからこその回り道なんだろうし」
そう、最初の方でさらっと話した
流魂街の娘と貴族の身分違いの恋。貴族は朽木白哉だと言ったけど、その相手ってのがこの緋真だったんだ。
「このまま掟がー決まりがーとか言ってたらジジババになっちゃうぜ? あんたらがさっさと結婚しちゃわないとうちのじっちゃんも調子にのって次は何をしでかすやらわかったもんじゃない」
考えただけでも恐ろしい、とわざとらしくぷるりと体を震わせた。
実際問題、乗り掛かった船だとあれやこれや緋真や朽木に対して苦情と言う名の助言をいい続けている内にどっぷりこの件に足を突っ込んじゃってて、気付いた時にはもう引き戻る事は出来なかったと言うね。
「てか何で恋のイロハも知らない俺が恋愛相談なんつーもんをやってるんだか……勘弁してくれよなぁったくよぉ」
「? 何か仰有いましたか?」
「んにゃ、別に何も?」
ハァ……恋、ねぇ━━?