第13章 修行の成果! R18
春高予選は負けて勝った。
つまり、1回戦では負けたけれど2回戦は勝ち。
音駒は今年も滑り込みで春高に出場が決定した。
部員みんなで廊下で喜んでいれば、試合を見にきたOB、OGさんたちが駆け寄ってきてくれた。
美優さんとリエーフセンパイのお姉さんのアリサさんにおめでとうって抱きつかれていると、夏祭りに見たけれど話はあまりしなかったセンパイが私をじっと見ている。
「何、ですか?」
「オマエが黒尾のカノジョ?学年は?」
くりくりした目で私を見るセンパイ。
こくこく頷くと、私を抱きしめている美優さんが笑う。
『やっくん、莉奈ちゃんが怖がってるよ。ちなみに莉奈ちゃんは1年生。』
「怖がってねーだろ。」
「いーや怖がってるね。うちの子いじめないでくれない?やっくん。」
いつの間に来たのであろう。
大好きな声がした瞬間、後ろへ下がる体。
バランスを崩し、倒れそうな私の体を抱きしめるように支える力強い腕。
「これ、俺のだから。」
どんな表情をしてこの言葉を言ってくれたのだろうか。
うれしくて、恥ずかしくて、真っ赤な顔を隠すように俯くと、前からやくセンパイの見た目とは正反対の豪快な笑い声。
「おまっ…黒尾のそんな顔初めて見た。
俺これ見れただけで今日の春高予選満足だわ。」
「うわっ!ひでー!俺たちの試合見に来てくれたんすよね!夜久さん!」
割り込むように話に入って来たのはリエーフセンパイ。
やくセンパイはそのままリエーフセンパイにダメ出しを始める。
美優さんとアリサさんは今度お出かけする予定を立てている。
私はというと、てつろーさんに抱きしめられたまま。
「てつろーさん、そろそろ離して…?」
「離して欲しーか?」
直接耳に吹き込まれる声に背筋が震える。
「恥ずかし…から。」
そう答えるときつく回されていた腕が解け、頭の上にぽんと手のひらが置かれた。
その手のひらは私の頭を乱暴に撫で、せっかく整えていた髪の毛を乱した。
「ほら、そろそろ時間だろ?閉会式行ってこい。待ってるから。」
乱れた髪の毛に気を取られていると優しくとんと背中を押される。
てつろーさんの気持ちが私の中に入ったみたいでうれしくて、私はてつろーさんの方を振り向きにこりと笑った。