第12章 灰羽リエーフの1日 2017
PM5:10
授業が終わり、着替えをするためにロッカーへと移動しながらスマホを確認すると新着メッセージ。
”西新宿駅近くのカフェで待ってるね?”
名前を聞けば、学校から5分程度の距離のチェーン店。
授業が終わり今から行くとメッセージを送ると鞄を背負い学校の外に出る。
楽しみで、楽しみでいつのまにか小走りになる俺の足。
たまにある水たまりを飛んで避ける。
すぐに会えるはずなのに、少しの距離がもどかしい。
ーーーーーー
「いらっしゃいませ、一名様でしょうか。」
店員さんに問われ、俺が口を開こうとすると窓際のソファ席から俺を呼ぶ声。
そちらに近づけば美優さんがにこりと笑った。
『お疲れ様。』
「美優さん、結構長い間ここにいた?」
鞄を下ろしながらソファに座りそう問えば、美優さんは苦笑いをする。
コーヒーの減り方が、少し前に来た感じじゃないんだよな…
『実は、こっちに買い物に来たあと時間が出来て…でも1時間くらいだよ?』
多分時間に関しては嘘はついてない。
でも…
「美優さん、お昼食べた?」
そう問えば、食べたと美優さんは答えるけれど、俺と目が合うとふいとそらし、コーヒーを飲もうとするからすす、とコーヒーを俺の方に寄せた。
「みーゆさん?」
にこり、美優さんに微笑めば、美優さんは観念したのかはあ、と息を吐く。
『お昼過ぎまで夕飯の仕込みしてて、そのあと買い物でばたばたしてたから …
でもここ入った時にコーヒーとセットのクッキーサンドは食べたよ…?』
今の時間食べたら夕飯入らなくなりそう…と小さな声で付け足したのを聞いたけれど、そんなの無視して俺はメニューを開き、店員さんを呼んだ。
「スフレパンケーキのダブル1つとフレンチトースト、それとブレンドコーヒー2つ。あと、取り分け用の皿1枚お願いします。」
『…リエーフ?』
「美優さんは少しでいいから食べる。
残ったのは俺が食べるから。」
しゅんとした顔の美優さんを見ながら、俺はわざと音を立てながらメニューを閉じ、戻した。