第3章 残暑
啓太は香苗の頬に手を置くと、そのまま顔を近づける。
キスは恋人とだけ、なんて言う人もいるけれど、そんなこと気にしない。
香苗さんとキスしたい。それだけ。
障害も何も無く、2人は自然にキスした。
顔を離すと、香苗は力強く啓太を抱きしめた。
「どうしました?」
「キスするんだなーって。」
触れ合う肌と肌は汗ばみ、少しひやっと水っぽい冷たさを感じた。
「キスしてほしかったんですか?」
啓太が意地悪く尋ねると、香苗は顔を逸らしてふてくされる。
「・・・ダメ?」
ちろり、横目で啓太を見る香苗。
「ダメじゃないっすよ?」
そんな反応されてしまっては、可愛さあまって嬉しくなってしまう。
例え計算された可愛さであっても、香苗さんなら別に良い。
あぁ、俺は香苗さんが愛おしく感じられる。
彼女のことなど啓太の頭から消えていた。