第2章 季節の変わり目
「泊まっちゃったら、彼女さんがまた怒るよ?」
香苗は慎重に言葉を選ぶ。
「あたしはあの子の恨みなんて買いたく無いなぁ。」
笑顔で、何でも無いように。
明るい口調は、真っ暗な啓太の部屋には似つかわしく無かった。
「・・・俺、フラれたんですよ?」
消え入りそうな啓太の声。
しかし香苗の耳には嫌にはっきり聞こえた。
「帰らないでください。まだ。もうちょっと。」
だだっ子のように荒々しく、香苗の手を引いてベッドに戻る。
「おいおい、ちょっと。原田?」
半笑いの香苗が冗談で済ませようとしても、啓太は止まらない。