第2章 季節の変わり目
香苗は悩んだ。
別にこのまま一緒にいてもいいのだ。
正直帰るのも面倒だし、何なら泊まって行ってもいいんだ。
男の家に泊まったからって騒ぎ立てるほど、自分はうぶでも子供でもない。
ましてや浮気だと叫ぶ彼氏なんてのもいない。
「まだ寂しいの?」
一応、自身の右手を掴む原田に問うてみる。
ただ人恋しいならいくらでもいてやろう。
何なら今からコンビニに酒でも買いに行って、やけ酒に付き合ってやってもいい。
酒に弱いコイツの事だ。さっさと潰れて寝てしまうだろう。
そうしたら自分は帰るなり、介抱で泊まるなりすればいい。
「・・・寂しいです。」
でも。この右手は。
あたしを掴むこの右手は。
とてつもなく嫌な予感がするのだ。
この右手を握りつぶさんほどに。