第4章 *迷い子
「黒じゃないと、なぜ信じれる。 侵入者の事など信用出来るのか?」
『それは…この! 手帳を読んで下されば、信じてもらえるかと』
私は手に持っていたさっきの手帳をセン様に手渡す。
その内容を読んでもらえば、彼が黒ではないと分かってくれるはず…
予想以上に読むのが早かったセン様は、すぐにパタッと手帳を閉じ私の後ろ、クレス君の方に視線を向けて言った。
「……お前も術師なのか?」
「……。」コクリ
「本当に、その怪しい奴らから逃げて此処に迷い込んできたのか?」
「……。」コクコク
「そうか……やれ、ルノ」
「はい、セン様」
『っ!! まっ、』
普通に会話をしていると思ったら、いつの間にかクレス君の後ろにルノさんがやって来ていて、セン様の合図でルノさんはクレス君の体を掴んだ。
すぐに私はルノさんを止めようとしたのだが、腕と足が何かに縛り付けられたかの様に動かなかった。
「大人しくみていろ、ヴィア」
冷たい顔でセン様にそう言われた瞬間、プツンッと何かが切れた。
『……だめ、ダメ、だめ駄目ダメっ!!』
「!?」
センが驚いている内に、どうやってか手足の術を切ってしまったヴィア。
自由になった瞬間、クレスを守る為に動き出す…が、
『っ……』
再びセンの術に捕まる。
さっきから学んでか、まるで沼のように足が足元に出来た影に沈んでしまっているのだ。
「ヴィアっ! 落ち着け!」
『う″ぅっ…あ″ぁぁぁぁぁっ! 』
「くそっ…」
『ん″ぅぅぅぅっ…ん″ーっ!!』
足も、両手も、口も、影に塞がれ今度こそ全く身動きが取れなくなった。
無我夢中でがむしゃらに体を動かそうと呻いているヴィアの前に立ち、目を見ながら聞こえるようにセンは言う。
「ヴィア、良いから落ち着け。 感情に任せて自分を見失うと駄目だと言っただろ」
『んぐっ!!』
獲物を狙う獣のように鋭く変化した目を、負けじと見つめ返し続ける。
「別に命を奪うつもりは無い、ただルノに心を読ませてるだけだ。 だからそう怒るな」
『う″ぅぅぅっ…』
苦しいだろうと思い口の影を解いてやり、何とか落ち着かせようとヴィアに手を伸ばすと鋭い痛みが手に走った。