第4章 *迷い子
「っ…!」
『う″ぅぅっ、』
酷く興奮状態なヴィア、手を伸ばすと噛まれてしまった。
ギリギリと強い力で噛まれ少し顔を歪めてしまうが、それを止めずに見ているセン。
まるで獣に取り憑かれたかの様に手を噛みながら低く唸り声をあげている。
『ふーっ、ふーっ、ぐぅぅぅっ』
「……ヴィア」
ギリギリと締めていた口の中に、ジワッと鉄っぽい味が広がってくる。
センもヴィアも一瞬で流血に気づいた。
『う″ぅぅぅっ!……ぅぅっ、ぅ、ぁ、あっ』
「落ち着いた?」
目の前がだんだん鮮明に見えてくる。
気づくと目の前に、少し顔を歪めたセン様が居て自分の口に何故かセン様の手を咥えているという謎の状況に少し戸惑った。
『あ、私…なんで?』
ふと口の中の違和感に気づいた。
『血の、味が…ん』
気づいた時、セン様に口を塞がれた。
ぬるっと舌が口内に入ってきて、長いディープキスをされ口が離れた時にはもう血の味など感じなくなっていた。
『ん、はぁっ…』
拘束が解かれ、その場に崩れてしまった。
クレス君が「大丈夫?」というように駆け寄ってきてくれて、思わず笑が溢れた。
『良かった、無事だったんだ(笑)』
「……。」ニコッ
「クレス、家に来ないか?」
言ったのはセン様だった。
突然の事に、私とクレス君は目を丸くしてセン様を見る。
「もちろん、断っても良い。 だが、住む場所も無く知らない街ならば此処に留まっても良いんじゃないか? 居るのは全員お前と同じ術師だし…必死に守ろうとしてくれた人も居るしな」
さっきの冷たい顔とは違い、今は暖かさに包まれた顔で少し安心した。
隣でクレス君は少し悩んでいたようだったが、すぐに頷き笑顔になる。
「良かった。 ヴィア、後は任せる」
『え、私ですか?』
「あぁ、一番懐いてるようだしな(笑)」
『ぁ、はいっ!』
セン様とルノさんは、そのまま屋敷の中に歩いて行った。
残った私はクレス君に話しかける。
『じゃあクレス君、まずは体洗おっか。 それから一緒に服を見に行こう』
「……。」コクコク
私はクレス君の手を取り、一緒に浴室に向かって行った。