第4章 *迷い子
「(初めまして。 僕の名前はクレスと言います。
原因不明で声が出なくなり、成長も止まってしまった16歳の男子です。 信じてもらえないかもしれないですけど、本当に体の成長が9歳位から止まった。
それまでは普通だった両親も、だんだん育たない僕を気味悪がって12歳か13歳の時に捨てられてしまったんです。
親も家も無く、途方に暮れていると、変な奴らに拾われ今まで生活してきました。
ですが、その奴らは術師を狙っていると知りつい先日、そいつらから逃げてきたんです。
でも知らない街で、誰も頼れずに途方に暮れているとここに辿り着き貴方に出会いました。
助けてくれて、ありがとうございました。)」
随分辛い内容になっていたが、何となく彼の気持ちが分かった様な気がした。
というか…16歳だったんだ、クレス君。
そこに一番驚いた。
『そっか、辛かったね…術師を狙う奴らって事は、クレス君も術師なの?』
「……。」コクリ
『へぇー! 私も実は術師なんだよ。 自分はどんな術を使えるのかよく分かってないんだけど…クレス君はどんな術を使えるの?』
そう尋ねると、庭に植えられたまだ咲いていない、これから咲く予定の花に手をかざした。
何が始まるのかと思っていると、突然茎が伸び葉が咲き誇り花が咲いたのだ。
『…………え、凄いっ! 花を咲かせる事が出来るんだ』
「……。」ブンブンッ
『え、違うの?』
手元にあったメモ帳がクレス君の元にいき、すぐに帰ってきた。
そこに付け足された言葉を読む。
『…成長、させる術?』
「……。」コクリ
『凄いっ!! 成長って、そんな術あるんだね』
そう言って話していると、いつの間にか仲良くなっていた私とクレス君。
初め警戒されていたのが嘘のように溶け合っていて、凄く嬉しかった。
そう、話していると私の後ろから聞き慣れた声が聞こえたのだ。
「ヴィア、誰だそいつは」
『っ!! せ、セン様、お帰りなさい』
機嫌が悪そうなセン様が、コチラに向かって歩いて来る。
勝手に屋敷に入っていた事が悪かったのだろう。
『すみません、この子は決して黒ではありませんので、どうかお許し下さい』
謝罪を述べ頭を下げる。
黒だと思われては彼の命が無くなりかねないと、必死だった。