第1章 *どうしてこうなった。
「……なんで、」
リヒトの長い長い前髪に隠れている目は、悲しそうで…でも、私を鋭く見ている。
切なそうに言葉を紡ぐ彼を見ていられなくなり、うつむいた。
「…なんでウソなんかついたの」
唇をぎゅっと噛む。
顔を上げることなんて、できなかった。
「…答えて」
気付けば、リヒトの口調はどこか冷たかった。
気のせいなのかもしれない。けど、冷たく感じる。
そして私は、ゆっくりと横に首を振った。
「…言え、ない」
「なんで?」
「…言いたくない、の」
吐き出た言葉は、拙いかもしれないけれど真実だった。
言葉を発しないリヒト。
私は顔を上げる。
「っ、んん!?
は、っぁ、ん、ぁ…!!」
ぐい、と腕を引っ張られたと思うと、唇に熱が当たる。
キスされてる、と気付いたのはすぐ。
「ん、は、ぁ…んぁ、ん…!」
なに、これ…
いつものリヒトと違う…!
私のゆるゆるだった防御網を突破したリヒトの舌は私の口内ににゅるんと入り、暴れる。
口内がおかされていくのを感じて、思わず口の合間から声が出てしまう。
「ん、はっ…はあ、はあ、はあ…
リヒト、ごめん、なさい…」
解放された口。
私はリヒトを見上げた。
けど腕を掴まれたまま近くのベッドに押し倒され、リヒトの顔を確認することなんてできない。
ただ分かったのは、
リヒトはすごく…怒っているということ。