第2章 魔導師
痛みも悲しみも辛さも何も感じない。真っ暗の深い海の中にいるみたいだ。僕はなんなんだ?
『ガシャン!!!!!』
何かが落ちる音で僕は目を開いた。
「シン!何をやってるんですか!!大事な商品ですよ!これは!」
「すまんすまん。まぁ一つや二つの損害なんてどうってことないさ」
「ほんとにあなたって人は…」
起き上がると2人の人が割れた皿を前にして揉めていた。何があったのかは分からないけど、白髪の人が怒ってるのがなんとなく分かる。
それよりここはどこ…?僕、何してたんだっけ…。
何も、思い出せない。
「おっ、目が覚めたか〜?」
横から聞こえた声の主は、ガタイのよくて背も大きい、一言で言えば巨人のような人がにかっと笑って立っていた。
青い髪に大きな体、多分僕とは違う国の人なんだろう。
「驚かして悪いな。ダンジョン跡で倒れたお前をシンドバッドとジャーファルが運んでくれたんだ」
大きな手で僕の頭を撫でながら言った。その声に気づいて揉めていた2人もこっちに駆け寄ってきた。
「目が覚めたんだな!よかった!」
「大丈夫ですか?1人でダンジョン攻略なんて…」
さっきからこの人たちが言ってることが僕には分からない。ダンジョン?攻略?何のことなんだろう…?
大事なことだったはずなのに、思い出せない。無理に思い出そうとすると頭にノイズが走る。
思い出せそうで思い出せなくて、僕は頭をかかえていると紫髪の怒られてた側の人が手を差し出して言った。
「俺はシンドバッド!このシンドリア商会の党首だ!よろしくな!」
やっぱりこの人が1番偉い人なんだ…。
僕はなんとなく分かっていた。この人だけ何かが違っていた。1人、輝いているような…。そんな感じ。
「あんたの名前を聞かせてくれないか?」
「僕はーーーーーーーーー」