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短編集【庭球】

第73章 エンドロールをぶっとばせII〔ジャッカル桑原〕*


*裏注意
*社会人設定
*第72章「エンドロールをぶっとばせI」の直後のお話です。今作だけで楽しめるように、といった配慮は一切しておりませんので、お手数ですが前章をご一読ください




ドライヤーの轟音の中、ふと肩に感じた重さ。

薄目を開けると、洗面所に入ってきたジャッカルと鏡越しに視線がぶつかった。
「俺もシャワーしてくるわ」と、彼の口の動きはおそらくそう言っていたと思う。
肩に置かれた手がバスルームを指さしたのを見て、私は軽く頷いた。

ジャッカルは歯ブラシをくわえて、少し照れ臭そうにしながらそそくさとジーンズを脱ぎ捨てて、バスルームのドアを閉めた。
直後に聞こえてきた水音に、私たちが本当に恋人同士になったのだと念押しされているような気がする。
妙にどきどきして、髪を乾かすことさえ適当に済ますのははばかられて丁寧にセットしたくなるのだから笑ってしまう。
今さらどれだけ取り繕ったところで、一番格好悪いところを昨日見られてしまっているというのに、だ。


アメニティのちゃちなブラシで心ばかりのブローをしていると、バスルームの扉が開いた。
蒸気と共に出てきた濡れた身体は、なんだか見てはいけないもののようで、慌てて鏡越しの視線を剥がしてドライヤーに意識を向ける。
ジーンズを腰履きにしたジャッカルが洗面台に近づいてきて、「綺麗な髪だな」と私の髪を一筋すくった。


「…ありがと。あ、ドライヤーする? かけてあげるよ」


照れ隠しでふざけて温風を吹きかけると、「おう、頼むわ…って、いらねえよ!」とテンポのいいノリツッコミが返ってくる。
昔から変わらない、心地いい空気感。
くすくすと顔を見合わせて笑うと、ジャッカルの顔がゆっくり近づいてきて。
ドライヤーを止めて目を閉じれば、啄むような優しいキスが落ちてきた。
一度離れた唇が、また吸い寄せられるように重なる。
温かくぬめるジャッカルの舌先が、開けろと請うように私の唇をノックした。
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