君を俺だけのものにしたい【Mr.FULLSWING】
第11章 兎丸の場合
所変わって、水平線の広がる海に着いた。
季節外れの海岸には海の家なんか無くて、まるでグラウンドみたいに延々と浜辺が続いていた。
「わーい!海だー!」
○○ちゃんはさっさとカバンを投げ捨てると、ざくざくと砂浜を駆けて行った。
「んぎゃー!靴に砂入った!」
その場で靴と靴下を脱ぐと、両手にぷらぷらと持って帰って来る。
誰だよ、サボるなんていけないよーなんて言ってた人。全力で満喫してんじゃん。僕は呆れて笑い声を上げる。
「○○ちゃん、僕より楽しんでるじゃん。」
「だってー。海なんて久しぶりで嬉しいんだもーん。」
べーっと舌を出して戯けてみせると、○○ちゃんはカバンの横に靴と靴下を並べる。
「誰もいなくてプライベートビーチみたいですし?」
○○ちゃんの広げた手の先は、真っ青な海と白い砂浜しか無くて。
「プライベートビーチかぁ。いいねーそれ。」
今日は僕達2人の貸し切りかな?僕も遠慮無しにカバンや靴を投げ出した。
「タオル持って来たから、足までなら海にも浸かれるよ。」
「よーし!比乃君、早く!」
すでに走り出していた○○ちゃんの後を追う。
「待ってよー!」
「待たなくても追い付くくせにー!」
その言葉通り、僕はすぐ○○ちゃんの隣に並んだ。
いつもなら「海だったら泳ぎたい!」って思うんだけど、たまにはこんなのもいいかなー、なんて。
だって2人分の足跡が嬉しかったんだもん。
あっ、でも、来年の夏は2人で泳ぎに来たいかな。
そりゃあ僕だって○○ちゃんの水着姿はしっかり見たいしね。
「比乃君の馬鹿!」
その事を○○ちゃんに伝えると、○○ちゃんはまた顔を赤くして照れ笑いした。