第3章 オオサンショウウオ
「!?え?!い、いいです!!そんな!!大袈裟な!!!」
もちろん全力で拒否をした。
あんな事があった後だ、高尾君と2人きりなんて耐えられない。
だから嫌だったのだけど
「いやいや、大丈夫じゃないっしょ、遠慮すんなって、ほら、行くぞ」
と言って、高尾君は無理矢理わたしを引きずって保健室まで歩きだした。
教室を出る前に、後ろから香織の「よろしく〜」という声が聞こえた。
よろしくじゃないよ!助けてよ!
…………
それから、しばらく廊下を無言で歩いていると
「鶴子ちゃんさぁ、もしかして昨日のこと気にしてる?」
と、高尾君から鋭い質問をしてきた。
もちろんそんな事答えられるわけもなく、黙って俯いていると、
「俺さ、昨日あぁ言われて、正直すっげー嬉しかったんだぜ?鶴子ちゃんの事だから、どーせ『引かれた!』とか思ってんだろ?全然引いてねーし、むしろ、もっと頑張ろうと思えた。昨日ちゃんと礼言えなかったけど、改めて、ほんと、ありがとう」
そこまで聞いて、やっと気付いた。
もしかして高尾君なりに気を使ってくれたんじゃないだろうか…
無理矢理保健室に連れて行こうとしたのは、この話がしたかったから?
わたしがずっと上の空だった事に、心配してくれたから?
「いえ、こちらこそ…ありがとうございます…」
自然と笑顔で言えた。
心のモヤモヤも、いつのまにか消えていた。
それにしても高尾君はなんでもお見通しだ…
秘密とかできない気がする。