Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第38章 ☆世界一、君が好き。《及川 徹》
次の日、朝起きると徹がいなかった。
『えっ、と、おる!?え、あ、え!?』
床に脱ぎ捨ててある服を着て、リビングに走る。ガチャリと開けるといい匂い。
「あ、おはよ。遅かったね?」
こんがりした匂い。徹の後ろからフライパンを覗くと、思った通り、ベーコンと卵がじゅうじゅう焼かれていた。
『おいしそぉ~!』
「あぁコラ、抱き付くな、料理しにくい!」
『ふふっ、パン焼いてくるね』
食パンを2枚をトースターに入れる。徹が焼いてくれた、スクランブルエッグとベーコン。それに付け合わせでキャベツを切手、レンジでチン。あと珈琲も一緒に。
「じゃあ、いただきます」
『いただきまーす』
うん、美味しい。ご飯を食べて、それから空港へ向かって、国際線のロビーで他のメンバーの到着を待つ。そして、時はやって来た。
「あ…もうそろそろ、かな」
『そっか…』
他のメンバーが徹を呼ぶのが聞こえる。お別れってなると、どうしても気持ちが落ち込んでしまう。ダメダメ!最後は笑わないと。
『徹っ』
「ん?」
『いってらっしゃい』
徹はぎゅうーと抱きしめてくれた。それから私の手に、小さな箱を載せた。
「これ、後で見て。じゃ、いってきます」
『うん、いってらっしゃい』
もう一度言って、徹は荷物を持ってゲートの向こうへと消えていった。そういえば、この箱の中身はなんだろう?軽い気持ちで開けたけど、思わず口を覆った。
『っ、とぉる…』
"俺と、結婚してください"
シンプルな、言葉。それと、可愛らしいリングが1つ、入っていた。チェーンに通されたそれを、大事に大事に、首にかける。
そこへようやく岩泉が来た。
「クソ川は?」
『もう遅いよ。行っちゃった』
今日は花巻と松川はいないようだ。
「今日は泣かないのな」
『泣かないよ』
にこり、と岩泉に笑う。
『泣く必要なんて、なかったんだもん。だって、徹、私のこと大好きって、言ってくれるから。だから、泣かなくていいの』
「そーゆーことかよ」
岩泉も笑った。笑って、私の首元を指差した。そこには、チェーンに通されたリングがキラリと光を反射していた。
私の大好きな徹は遠くにいるけど。
不思議と、待つのは苦にならない気がした。
END.