Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第28章 放課後でぇと《木葉 秋紀》
何かが掠める感覚、その後は何もない。そろそろと目を開ける。
「……あ?」
『はい、クリーム取れたよ!』
にこっと笑う海宙の指先には、白い生クリームが。もしかして…
「それ、付いてた?」
『うん。だから取ったの』
はあぁ…っとため息を吐いて顔を手で覆う。何だよビビったし焦ったわ。海宙がキスすんのかと思った。
しかも、俺の勘違いっつーのが腹立つ。俺だけドキドキして、バカみてーじゃん。いっちょ海宙にもドキドキしてもらうか。
「おい、指貸せ」
『はい?あ、ちょ……っ!?』
クリームの付いた海宙の指を口に含み、甘いそれを舌で舐めとる。手を放すと、海宙は真っ赤になっていた。
『あっ秋紀、何するん…っ///』
「…おかえし?」
『え、私悪いことした?ね、してないよ!』
「俺の心臓に悪いことしたの」
『えぇ、覚えがないよー!』
あれこれ頭を悩ませる海宙が面白くて、笑った。もう一発、かますかな。
「そーだ、さっきのゲーセンの使うな?」
『さっきのって…んっ!?』
ちゅっと海宙の唇に吸い付き、すぐに離れる。ぽけっとしていた海宙だが、ぼんっと頭から湯気が出た。
『なっ、あっ秋、ちょっ!?』
「良い反応いただきましたー」
テンパる海宙が面白くてまた笑って。もぉっ!と海宙は俺の横腹に肘打ちをお見舞いする。
『秋紀のバカっ!』
「どーせバカですよー」
『なんか腹立つなぁ』
「勝手に腹立てとけ」
そう言って顔を見合わせて笑った。そしてどちらからともなく手を繋ぎ、指を絡める。
『…ねぇ、秋紀』
「ん?」
『いっこ気付いたんだけどさ』
「何に?」
『秋紀って照れた時にさ、私のかみのけくしゃって撫でるよね?』
「うっせ///」
『あ、照れてる?』
「ちげーよ!」
『はいはい。あー、今日は楽しかったなぁ』
「またデートしような」
『今度は動物園行きたいな』
「ライオンに食われんなよ?」
『そっちこそ』
そんな冗談を言ってクスクスと笑い合う。
BGMは虫の声。
手から伝わる温度。
抱えるのはぬいぐるみ。
寄り添って伸びた影法師。
秋の夕陽が優しく照らしていた。
END.