Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
【蒼井 side】
外に出れば、北風の冷たい11月。
キュッキュッとシューズが床をこする音、それから元気な掛け声と、ボールが床を跳ねる音。色々な音に彩られる体育館は、今じゃあすっかり懐かしく感じる。
引退した女バレは今日は練習が休みの日。だから、トオルに誘われて、男バレの練習にのこのこついていったのが間違いだった。
ひっじょーに、疲れるのだ。
今は3vs3のミニゲーム。わたしとトオルとハジメ対、矢巾と京谷と渡。若干戦力差があるものの、わたしは女子ということで。
「及川、悪い、ちょいズレた」
「岩ちゃんダイジョブ!」
『トオル、高いのちょーだい!』
「オッケー海宙!」
ポーンと山なりにボールが宙を舞う。助走をつけて、タンッと踏み切る。
あ、すごい、いいかも。
その予想は見事に的中。ズドッとボールは床に突き刺さった。ハジメには敵わないけどそれなりに重い球。真芯を捉えた手のひらが、ジンジンと熱を持っている。
『ナイストス、トオル!』
「海宙、今のスゴい良かった!」
『やっぱそう?でも、ちょい疲れた…』
「海宙さん、タオルどーぞ!」
『金田一、ありがとー』
たたたっと駆け寄る190㎝からタオルを受け取り、汗を拭く。するとドリンクを投げて寄越される。慌てて受け取れば、投げた主はニヤリと笑った。
「ナイス反射神経」
『危ないから、投げないでねハジメ?』
「どーだかな。おら、クソ川もだ!」
「あだっ!?」
ぶんっ、と勢い良く投げられたボトルは、トオルの頭にスコーン!と当たって。いつもの光景に、口を開けて笑った。
春高の代表決定戦、男子も女子も接戦で。あと少しのところで勝てなかった。その悔しさをバネに、トオルもわたしもバレーの推薦で大学を選んだ。自分も続けたいのだと、ハジメは一般受験で頑張るらしい。
何だかんだと言いつつも、この3人、幼馴染みでまたバレーができると思うと、とても嬉しかった。
タオルで顔を拭いながら、チラリとハジメを見る。トオルを羽交い締めにする彼は、本当に楽しそうに笑ってて。見詰めるだけで、きゅうぅんっ、と胸が鳴る。でも、ハジメには気付く様子は一切無い。
つまるところ、わたしは長い長ぁい片想いをハジメにしていたりする。