Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第24章 おつきみ《月島 蛍》
皿洗いするよ、と言う蛍に甘えて、缶ビール片手にベランダに出た。ひやり、と冷たい秋の風が体を掠める。
9月も半ばを過ぎれば、東北は冷え込んでくるものだ。北海道に比べればましなものの、朝晩の冷え込みはきつい。
台風一過の後とあってか、快晴の夜空には満点の星と、満月が煌々と照っていた。
黄色の月を見ていると、思い出す。
月色の、彼のこと。
手すりにもたれてお酒を飲んでいると、カラカラとドアの開く音が聞こえた。振り向けば、パーカーを2つ持った蛍。
「寒くないですか?どうぞ」
『気が利くね、ありがとう』
ありがたく受け取り、部屋着の上にそれを羽織る。隣の蛍もパーカーを羽織り、無言で空を見上げる。そして一口ビールを飲み、わたしを向いて言った。
「月とビールって、合いますね」
『うん。風流だねぇ…』
何も言わない2人の間を、穏やかな風が吹き抜けていく。サァッと木々が揺れ、わたしは蛍を見上げた。
視線を感じたのか、彼がわたしを見下ろす。
「なんですか?」
『"おつきみ"…とか?』
「そういうことですか…」
苦笑する蛍、どうやら言いたいことが分かったよう。彼の名字は"月島"、彼を見ることも一種のお月見、かと思ったのだ。
すると、少し考えた後、蛍はニヤリと微笑みながら言った。
「それは良いですけど…海宙さんも、月島になるんですよ?」
『~っ、そ、う、だね…///』
思わぬ返しに、視線が下を向く。どうしよう。くすぐったくて、照れ臭くて。でも一番は、すっごく嬉しい。
「僕に口で勝とうとしたらダメですよ」
『うぐぅ…なんとも言えないです…』
口喧嘩では連戦連敗、蛍には一度たりとも勝てた!と思う瞬間が無い。
だから、あえてこう言った。
『でも蛍がそう言ってくれて嬉しい。ありがとう、大好きよ、蛍?』
「~っ、それは、反則です…///」
ホラね。蛍は、こういう真っ直ぐなのに弱いんだものね。少し機嫌を損ねたのか、蛍はふて腐れたようだった。
「カゼひくんで、中入りますよ」
『あ、待ってよぉ。あのね、おだんごあるんだよ?一緒に食べよ!』
「ハイハイ」
『えぇ、テキトーなんだけど!?』
やんややんやと言いながら、部屋に戻る。わたしたちの背中を、月が優しく照らしていた。
END.