Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第18章 夏の病?《チーム音駒》
振り向く寸前、飛び込んでくる蒼井。転ばないよう、慌てて抱き留める。ふわり、と甘くて優しい、フローラルな香りがした。
『黒尾さ、あの…』
「悪い。つい、やっちまったわ…」
『あっ、謝らないでください!』
がばっと顔を上げる蒼井。その頬は心なしか赤い。
「でもお前、好きなヤツいるんだろ?」
『~っ!だからそれは…』
クイっとジャージの裾を引き、背伸びする。それから耳元でそっと聞こえた。
黒尾さんなんですってば―――
直後、一歩下がって俯く蒼井。信じられなくて、俺は問い掛けた。
「え、マジで、ガチで?」
『じゃなかったら言いません…///』
上目遣いで、頬を膨らませる。それだけで俺はノックアウトされちまう。
こうなったら伝えよう。でも、いざってなると気恥ずかしいもんだな。照れ隠しに頭をガリガリと掻きながら言った。
「順番が前後したけど、そのよ…俺も蒼井が好きだ。だから俺と付き合ってくんねーかな…?」
『そんなの、良いに決まってますっ!』
それから抱き付く蒼井。今この瞬間、俺の、彼女になった人。その温もりを感じてしばしの抱擁、それからゆっくりと離れる。
『あれ、黒尾さん顔赤いですよ?』
「あー、熱中症じゃね?」
お前のせいで、俺の心は多分熱を出すくらいに熱くなるんだ。
『ふふふ、そうかもしれませんね』
やわらかく笑う彼女の表情。これからもっと、いろんな顔を見たいと思った。笑ってるのも怒ってるのも泣いているのも。その全てを知りたいと思った。
だがずっと家の前にいるわけにもいかず。
「じゃあ、またな」
『はい。あ、待って。黒尾さん』
「ん?」
『黒尾さん、――――――――――――?』
彼女の言葉に、頬が弛む。それからもう一度、今度は少しだけ長い口付けを交わした。
黒尾さん、ねっ、ちゅう、しよう―――?
END.