Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第15章 ★祭りの夜に《木葉 秋紀》
【蒼井 side】
今日は8月のとある火曜日。
イコール現在、夏休み。
夏、真っ盛りなのだ。
海にプールに遊園地、遊びたいけどそうもいかない私たち。なぜかと言うと部活ですね、はい。我らが梟谷のバレー部も東京での地区予選に向けて着々と練習をしている。
「木葉ー、ナイスカバー!」
「前々、落ちるよー」
「ブロック2枚、打ち抜け木兎!」
キュッキュッとシューズが床を擦れる音、バンッ、ダンッとボールの弾む音。元気な掛け声が響く体育館。
そこで私は、海よりも深いため息を吐いた。
「どしたの~、最近、元気無いねぇ?」
「あ、また木兎がなんかやらかした!?」
『うぇえん、かおりん、ゆっきぃ…!』
半泣きになりながら2人の友達に抱き付く。かおりんは雀田かおり、ゆっきーは白福雪絵といって、同じ学年のマネージャー仲間でもある。
「よしよし、どした?」
私の頭を撫でながら、かおりんが訊いた。
「お腹空いたら悲しいよね…」
「どう見ても違うでしょっ!」
ぽつりと呟いたゆっきーをかおりんがつっこむ。本当にこの子は食いしん坊だ。
『あのね、秋紀なんだけど…』
「ノロケか」
即答でノロケを発したかおりんを、全力で否定する。
『ノロケじゃない、ノロケじゃなくて、ノロケじゃな…くないかも』
「「ノロケかいっ!」」
ハモったことに笑う。でも、私はすぐにシュンとして、ことの次第を話し出した。
『…というのもですね、昨日に遡ります』
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―
『全くもう、遅いんだから…』
ぶつぶつと呟きながら早足で歩く。なんであいつらは着替えるのに10分もかけるんだ。5分で着替えろ、5分で。
タンッ、と部室の前で立ち止まり、ドアの前で仁王立ちをする。今日という今日は怒っているのだ。そして、いざ乗り込もうとしてふと思った。
おどかしてみようかな…
ぴたりと壁に背中を付け、中の声に耳をそばだてる。飛び出すタイミングを計っていると、思いもよらない言葉が飛び込んできた。
それは聞きなれたクラスメイトの声。
良く通るその声は、私の心を震わせた。
「木葉ぁ、お前いつ蒼井にコクるんだよ?」
文字通り、思考が停止した。