第3章 【1】
-雛森 Side-
「…"碓水 灯"さんについて教えて欲しい…?」
「はい…そう…、なんですけど…。」
彼の目が、久しく大きく開かれた。
やはり、隊長相手に烏滸がましかっただろうか…。
そう思った私はぎゅっと目を瞑って、申し訳ございません、とやはり断りの言葉を続けようと思ったけれど。
「…どうしてだい?」
「っえ…と…。」
思わず逆に質問で返され、今度は私が目を開く番だった。
しかし、変わらず彼の瞳は優しく細まったまま。それを見て意を決した私は、言葉を選びつつ訳を話していく。
「あの、碓水さんが霊力を持っていない事は知っているんです。それに斬魄刀も何故か持っているという事も…。でも、何故あの人は此処---------…護廷十三隊に居るんでしょうか。はっきり申し上げるなら、斬魄刀も使う事がないなら流魂街で過ごすべきだと思うんです。それに、死神でもないのに死覇装を着て、しかもその上から京楽隊長の様な派手な着物を着ていたりだとか。あ、あと今朝は何故か雨なのに傘も差さず、しかも笑っていたんですよ!一人で!あ、それにですね、そもそも戦えもしないし、死神じゃないのに隊長格の皆さんを呼び捨てで!」
「ふむ、じゃあ今度からはちゃんと"隊長"って付けて呼んでみようかな。」
「ええ、それに是非とも敬語も使って頂きた……。」
そこで思わず言葉が途切れてしまったのは、さっき聞こえた声は、目の前の隊長からでなく、背後からの、しかも女の人のものだったから。
熱くなっていた体に、氷水をかけられたように、今の私はサーッと青くなっているだろう。
「ふふっ、赤くなったり青くなったり大変だね。桃ちゃん?」
何時もなら少しイラッとくるちゃん付けと柔かな笑いが、今はかなり恐怖に思えた。
きっと私の顔は、引き攣って上手く笑えていない。
雛森 桃
産まれてこのかた、ある意味大ピンチです。
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(たすけて)