第3章 【1】
-灯 side-
「ちょっ灯!?」
纏わりつく死覇装を引き摺りながら、護廷十三隊の廊下を歩いていれば、背後からかかった私の名を呼ぶ声。
紅色の羽織の袖から滴る雨を絞りながら振り向けば、そこには案の定。
「あ、おはよ乱菊。」
珍しく朝早いんだね、なんて続ければ、ため息をつく彼女。
「ったく…、取り敢えずおはよう。で!早く着替えるわよ!」
そして、私の腕を掴んではズカズカと歩き出した。
「どうせ灯の事だから、朝っぱらから雨に打たれて来たんでしょうね…。」
「ふふっ、良くお分かりで!流石だね、乱菊。」
それにまた、再度ため息を吐くものだから、私も笑ってしまう。
「ったく、灯はホントに呑気すぎる!少しは危機感とか、その他諸々を…」
そして歩きながら、私に対して延々と話し続ける彼女。
そんな力説する乱菊が面白くて、また笑ってしまう。
「(ふふっ、必死だ必死だ。)」
「だから…、って私の話聞いてる!?」
「んー…、少しは危機感を、とかまでは!」
「それ超最初ォ〜!!」
振り返って、漸く私が話を聞いてなかった事に気が付いたらしい乱菊が、頭を抱えて立ち止まった。
「ハァ…もう灯〜〜…」
「ごめんごめん。乱菊があんまりにも力説してたから、面白くって。」
「…それ褒めてるの?」
「ん〜…、どうだろ?」
でも、乱菊のそういう一生懸命な所が素敵なんじゃない?
そう続ければ、バッと上がる顔。
私とそう大差のない身長差は、乱菊が目を見開いて掴みかかってきた事により、更に近くなる。
「灯!!アンタまさか、他の奴にもそんな事言ってないでしょうね!?」
「ふふっ、言うわけないよ。乱菊だけ!」
そして笑って見せれば、思いっきり抱き着かれて、思わず蹌踉めく。
「灯かわいいい〜〜〜っ!!!!」
「なんか乱菊ってお母さんみたいだね。」
「ちょっ、こんな年上の娘は持った事ありません!」
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(日常)