第2章 やっと一歩
ガチャッ、と勢いよく扉が開く音がした。
驚いて振り返ると、そこにいたのは見たことのない男性だった。
「遅れてすみません!」
「梶くん、遅刻~」
「まだ30秒もオーバーしてないじゃないすか」
「5分前行動。これ、基本!」
その人が下野さんの言葉を軽く聞き流す。
そして、わたしと目があった。
「ああ、この子が例の」
例?
確か、この人のこと、下野さんが梶くんって呼んでた。
ってことは、彼が梶裕貴さん?
「天宮律華ちゃんだよね?」
『はいっ!初めまして!今日はよろしくお願いしますっ!!』
「わあー、元気いい」
梶さんがそう呟いたあとに、くすっと笑う。
「楽しくなりそ」
『え?』
「ううん、こっちの話!頑張ろーね、律華ちゃん」