第2章 やっと一歩
レコーディングルームの中が静寂に包まれる。
それを別室に控えているスタッフの指示で破られる。
「はい!良かったです。それでは、一旦休憩に入りまーす」
それが聞こえた途端に体の力が抜けてその場に崩れ落ちた。
「えっ!?ちょっ·····!大丈夫っ!?」
『緊張した·······』
わたしはかっすかすの声で一言、そう呟いた。
すると、下野さんが驚いたようにわたしを見てから、柔らかく微笑んだ。
「大丈夫。上手だったよ」
『ちゃんと、出来てましたか·····?』
「うん、もちろん。あの間のため方と息づかい、上手だったよ。それに、隣で泣くからびっくりしたよ」
『え?泣く····?』
手で頬を触ってから、目の前に持っていく。
確かに、その指は透明な液で濡れていた。
ああ、そういえば最後の方、声が掠れた気がする。
「初主役だよね?」
『はい。迷惑、掛けちゃいましたか······?』
「むしろ、逆!すごいね!途中でドキッてしちゃったし!」
ドキ····?
まあ、迷惑かけてないのなら、よかった。