第9章 ────一心同体の未来求めてる────
「失礼します。」
・・・あれ?なんだがカルラさんの部屋懐かしい。
なんでだろう?
────っつ!・・・頭痛がする。
「どうした?」
「あっあの・・・シンくんと出掛けてきます。」
どんどんと痛みは強くなる。
「・・・顔を上げろ。」
何故だろう・・・カルラさんに名前を呼ばれた途端、心が苦しくなった。
いつの間にか私は下を向いていたみたいで、慌てて顔を上げる。
すると、ふわりとマフラーを掛けられた。
「これカルラさんの・・・ですよね?」
「出掛けるのだろう?
体調が優れない様だからな・・・巻いておけ。」
真っ黒なマフラーはカルラさんの香りがして頭痛が和らいだ気がした。
「有難うございます。」
頭を下げる。
「構わん。
シンの妻になる貴様に体調を崩されても困るからな。」
「!?」
顔に熱が集まるのが分かったから、カルラさんに背を向ける。
カルラさんの小さな笑い声が聞こえた。
「で、では行ってきますね!」
恥ずかしくなって慌てて部屋を出た。
妻・・・。
どうしよう。私は今、とてつもなくだらしない顔をしている気がする。
「うぅ・・・。」
口元を隠す様にマフラーをグルグルと巻いた。
「何それ?」
急に声を掛けられ驚き立ち止まる。
「シンくん」
「それ兄さんのでしょ?」
「カルラさんが────」
『シンの妻』と言ったカルラさんの言葉が浮かぶ。
「あっそ。じゃあコレは要らないね。」
シンくんは内側が毛皮のコートを拡げた。
「え?要らなくないよ!
用意してくれたの?有難う。」
「・・・倒れられても困るから、ちゃんと着てよね。」
「うん・・・ありがとう。」
私はコートを受け取って羽織った。
「どういたしまして。
ほら、行くよ?」
手を引かれ、そのまま繋がれた指に顔が綻んだ。
久しぶりに来た街は様々な香りに溢れていた。
その中で、とても安らぐ香りが漂う場所に惹かれる
「シンくんあっち行かない?」
「へぇ・・・のクセに解るの?」
「いい匂いがする!」
「いいよ。行こうか。」
同じところに行きたいなんて、嬉しいな。
って思ったのに・・・
「こっちでしょ?」
「・・・こっち。」
どうやらシンくんはナッツのお店に行きたいみたいで、私は隣の茶葉を扱うお店に行きたいのだ。