第13章 月夜の語り
「それで、俺は『霧の団』に入ったんだ」
王子である自分自身が盗賊団に入れば、それは『賊軍』ではなくなる。
民衆から支持が得られれば、単なる反逆者でもなくなる。
だから、『霧の団』のリーダーになり、いずれ支持が得られれば身分を明かし、現国王と話をつけにいくつもりなのだと、アリババは声を荒上げて言った。
アラジンは、アリババの話を聞き終えて、複雑な表情を浮かべていた。
「アリババくんが、大切な友達のためを思う気持ちは、とてもよくわかるんだ。……でも、怒りにまかせて戦ってしまうと、悲しいことが起こる気がするんだ」
アラジンは、まっすぐにアリババのことを見据えていた。
その瞳はとても心配そうで、アリババの表情は、だんだんと青ざめていった。
「そ、そんなこと言ったって、しょうがねぇだろ!? この国は、今ひでぇーんだよ! みんなが苦しんでいるのを放ってなんかおけねぇ! 誰かがやらなきゃだめなんだ!! 」
明らかに動揺し、感情的になったアリババが叫んだ。
「確かに、お前らが言うことも、もっともだってわかってる! 俺たちが動くことで、難民もでているし、国軍や貴族といえど、人を傷つけちまってる! 」
そう言って、頭を抱えて髪をむしゃくしゃにしながら、アリババはひどく混乱している様子だった。
きっと、今まで色々抱え込んでいたんだろう。
アラジンと再会し、話をしたことで、押さえていた気持ちが溢れかえったみたいだった。
「あーもう! わけわかんねぇーよ……。だから今は、会いたくなかったんだ! もう、この国から出て行ってくれよ!! 」
泣き出しそうな顔で、大きくわめいたアリババの頭を、アラジンは持っていた杖の先で思いっきり殴打した。
その勢いには、ハイリアも驚いた。
「落ち着いてくれよ、アリババくん。君は大変なことを考えて、頭がごちゃごちゃになっているんだ」
痛そうに頭をおさえるアリババに、アラジンは穏やかな口調で言った。