第13章 月夜の語り
「そして、あなたは第七迷宮を攻略したのですね」
モルジアナが言った。
第七迷宮の攻略についてはハイリアも少しだけ、モルジアナとアラジンから話を聞いている。
領主ジャミルと戦い、モルジアナが二人と出会った話だ。
「ただ、やはりわからないことがあります……。なぜあなたはそのあと、あなたを裏切ったカシムのいる『霧の団』に入ったのですか? 」
確かにモルジアナの言うとおりだ。
そんな大きな裏切りをしているカシムと、昼間会ったときのように、アリババが仲良くしている理由がわからなかった。
「それは……アラジンと別れた後でのことだ」
アリババは複雑な表情を浮かべながら話し出した。
「俺は、自分の過去にけじめをつけるために、バルバッドに帰ってきたんだ。そして、ようやく知ったんだ。本当に悪いのは、カシムじゃなく、国の方だったんだって……」
第七ダンジョン攻略後、バルバッドに戻ってきたアリババは、国の荒廃に驚く中、カシム率いる霧の団が、王の国軍と衝突していることを知ったらしい。
まずは、カシムとのけじめをつけようと、噂をたどり再会したアリババは、そこでカシムから、スラムの民が今まで国から受けてきた、酷い仕打ちについて聞かされたという。
アリババが王宮へ迎えられたあと、スラムの住人たちは政策により、労働以外では外へ出られない、監獄のような隔離生活を受けたのだという。
そんな中、スラムで病がはやりはじめ、あっという間に蔓延した病は、スラムの命を片っ端から奪っていったそうだ。
しかし、その時、王宮はスラムの住人を助けようともしなかったという。
そして、無視するどころか、他への伝染を恐れて、居住区内にスラムの人達を閉じこめたそうだ。
結果、医者もいない、薬もない、スラムの住人たちのほとんどは死に絶えてしまったらしい。
カシムは、守ってもくれない国と対向するため、スラムを守るために、スラムの生き残り同士で『霧の団』を結成したのだという。
アリババは、カシムからその話を聞き、スラムのみんなや、家族同然であるカシムの力になりたいと思ったそうだ。