第13章 月夜の語り
「煌帝国……」
「ハイリアさん? 」
ぽつりと呟いたハイリアの言葉を、モルジアナが気にかけていた。
「ああ、ごめん。続けて……」
まさかとは思っていたけれど、この国にも奴らが介入していたんだ。
この国に居続けることが、危険だということがわかってしまって、ハイリアは動揺したが、今更、引き返すことはできないこともわかっていた。
奴らがいるとわかった以上、大事な友人達を、この国に置き去りにするわけにはいかない。
「さすがにさ、あまりに急な話だったし、俺もその話は断ったんだ」
アリババは王になることは断り、兄王子を精一杯支えていきたい、意思を伝えたのだという。
身の引き締まる思いで迎えた、その日の夜は、王に託された話を思い出して、中々、眠れなかったそうだ。
夜風に涼もうとアリババが部屋を出て、王宮の建物の裏側へ回った時に、見つけた人影がカシムだとわかった時は、本当に驚いたそうだ。
そして、彼の後ろから、次々と現れたスラムの強盗グループをみて、アリババはようやくカシムがここにいた事の重大さに気がついたという。
王宮の宝物庫が襲われているのを見つけながら、アリババはカシムが捕まるのを恐れて、人を呼ぶことが出来なかったそうだ。
放たれた火で王宮が混乱する中、カシム達はその隙に、宝物庫から財宝を盗んでいったという。
アリババは、いつの間にかカシムの仲間にぶたれ、意識を失ってしまい、目覚めた時にはベッドの中だったらしい。
そして、目覚めて最初に聞いたのが、先王が亡くなったという従者からの言伝だったという。
アリババは、自分が起こしてしまった事件が、王の死期を早めてしまったのだと思ったそうだ。
罪悪感に苦しくなったアリババは、それから、すぐに国を飛び出したらしい。
王宮から逃れ、しがらみのない生活の中、迷宮ダンジョン攻略を真剣に考えはじめた頃、アラジンに出会ったのだという。