第13章 月夜の語り
三年の月日がたった頃には、一部の人には努力が認められ、普通に話しかけてもらえるようにもなったという。
それでも、スラムでの生活は忘れられなくて、ある夜、アリババは王宮を抜け出して、生まれ育った懐かしい場所に行ってみたそうだ。
そして、その時にカシムと三年ぶりに再会したらしい。
「ほんと、なんであの時、カシムに会っちまったんだろう。あの時、カシムに会わなければ……あんな事件は起こらなかったんだ……」
アリババは、うつむきながら、ゆっくりと語り出した。
最初こそ微妙な顔をしていたカシムだったが、二人はすぐに昔のように打ち解けることができたそうだ。
カシムに誘われて、酒場に連れて行かれたアリババは、昔話を語り合いながら、酒を飲まされたという。
「お酒って……」
「そうなんだ。カシムは俺が、王宮では教わらなかったことを知っていたんだ。大人の社交術ってやつだな。俺は、むきになって進められるだけ飲んじまった」
ハイリアの言葉に、アリババは苦笑していた。
そしてつい、酔ったアリババは、王宮を抜け出すときに利用した、抜け道について話してしまったそうだ。
酒場を出て、カシムと別れて王宮へ帰る時に、まさかカシムの部下に、あとをつけられているなんて思いもせずに、元きた道を戻ったそうだ。
「ばかだよなぁ……俺……」
「アリババくん……」
目を伏せるアリババの眼差しは、どこか届かない遠くを見つめているようだった。
アラジンは何とも言えない、せつない表情を浮かべていた。
「カシムと会ってから、しばらくは平穏だったんだ。俺も、なんか吹っ切れた気がしてさ。なんでも前向きに、とり組むことができてたよ。そんなある日、俺は王に呼ばれたんだ」
その頃、王様は、一年病に伏していて、国の権限は長男のアブマド王子に移っていたそうだ。
バルバッド国内は、主要貿易国が衰退した影響や、怠け者だったアブマドが、政治に介入してきた煌帝国の使者のいいなりになってしまったこともあり、すでに崩れはじめていたという。
そんな状況を不安に思った王様は、アリババにこの国を任せたいと伝えてきたそうだ。