第12章 街角の出会い
行きと、帰りで、意外と時間がかかってしまったせいか、ホテルに戻った時には夕方になってしまっていた。
結局、おやつというよりは夕食になってしまったが、露店で買っていったものに、アラジンも少しは興味を示してくれた。
朝から何も食べてくれなかったのに、お焼き一つと、エウメラ鯛の香草焼きは食べてくれたのだ。
ようやく少しでも、口に入れてくれたことにほっとした。
暗くなった部屋で、アラジンは、月明かりを見つめている。
相変わらず考えにふけって、ふさぎ込んでいるのだけれど、朝よりはずっとマシに見えた。
黙り込んでいるアラジンを見守りながら、ハイリアは、突然出掛けていったモルジアナの帰りを待っていた。
ハイリアがホテルに戻ってから、モルジアナはすぐに交代するように、外へ出かけて行ってしまったのだ。
ホテルに、戻ってきて早々に、彼女が変な事を言ったから気になっていた。
『ハイリアさん、もしかして誰かと会いましたか? 』
さすがに、子どもに騙されて、店主から逃げていたとは言えなくて、町で露店を探していたら迷子になって、町の少年に助けてもらった事だけを話した。
カシムと金髪の少年の話をしたとたんに、モルジアナの表情が変わったのを覚えている。
それから、夕食も食べずに、すぐに外へ出掛けていったのだ。
何か気になったことでもあったのだろうか。
大した話しも伝えていないのに、なんで外に飛び出していったのか、よくわからなかったけれど、きっと彼女のことだから、何か意味があって外に行ったのだと思う。
モルジアナが出掛けてから、もう随分と時間が経った。
自分が街へ出掛けたときも、それなりに時間がかかったのだから、落ち着いて待っていなければと思うのだが、外がもうすっかり暗いせいか心配だった。
強い彼女のことだから、恐らくそこまで心配することはないだろうけれど、夜になり霧深くなった街には、また盗賊がでるかもしれない。
そう思うと、少し不安だった。
窓辺では、空元気を出しながら、アラジンが、ウーゴくんの笛に語りかけているようだった。
その様子を見守っているのも、痛々しくて、一人で待っているのが、なんだか心細かった。