第12章 街角の出会い
「いい場所だろ? 俺のおすすめは、エウメラ鯛の香草焼きだな。この場所にしか露店がねぇーんだ! 」
カシムが案内してくれた露店には、人の行列が出来ていた。
エウメラ鯛っていったら、シンに食べさせてもらったバルバッドの珍魚だ。
高いのかと思っていたが、意外とリーズナブルな値段で、露店で販売されていたから驚いた。
アラジンもこの魚が好きなようだったし、買っていったら食べるだろうか。
「カシム! やっと来たのかよ! 」
その露店の側から、金髪の少年がこちらに向かって、苛立ちながら歩いてきた。
手には露店で買ったらしい紙袋が二つ握られている。
「お前が買っておけっていうから、買ったけど、随分と来ないから冷めちまったじゃねぇーか! って、その子だれだ? 」
カシムに向かって怒って言った少年は、なんだか柔らかな印象を受ける人だった。
風格ただようカシムに比べ、彼は身近で親しみやすい雰囲気がある。カシムとは対照的といってもいいかもしれない。相棒というには、頼りなくもみえた。
見知らぬハイリアに気づいた金髪の少年は、琥珀色の目を大きく見開いてこちらを見ていた。
真っ白な自分を初めてみたときに、人がみせる素直な反応だった。
「悪かったな、途中で迷子のガキを拾っちまってさ! えーと、名前は、何だっけか? そういや、聞いてなかったな」
「ハイリアです。ガキって、そんなに年は変わらないように見えますけど! 」
「まあいいじゃねぇーか、ハイリア。無事に着けただろ? 」
「確かにそうですけれど……」
わざとらしく笑うカシムが気に入らなくて、ハイリアはむくれた。
「まあまあ、二人とも落ち着けよ。事情はわかったからさ。カシム、この子のこと、どこまで送っていくんだ? 」
金髪の少年が呆れながら言った。