第12章 街角の出会い
「まあまあ、いいじゃねぇーか。なんでわざわざ男装なんてしてるんだよ? せっかく見た目がいいのに台無しだろ」
カシムは、にやつきながら、わざと腕を高く伸ばしてハイリアの手から、ターバンを遠ざける。
「ほっといて下さい! 護身用にしてるんです! 返して下さい! 」
何度か腕を伸ばして、奪われていたターバンをようやく取りかえすと、ハイリアは仕方なく長い布を首周りに巻いた。
もう、髪を隠していても意味がないからだ。
「なんだ、もう巻かないのか? 」
ハイリアがむくれて黙り込むと、それが面白かったのか、カシムは笑っていた。
やっぱり見知らぬ妙な男に、関わるんじゃなかったと後悔した。
とはいえ、道もわからないから、ここは我慢してついて行くしかない。
「お前、うまい店を探してるんだろ? 露店以外にも、結構うまい店があるんだぜ。俺が連れて行ってやろうか? 」
「人を待たせているので、結構です。変なことしたら、投げ飛ばしますからね! 」
あからさまなナンパに呆れながら、ハイリアは、じろりとカシムを睨んだ。
「おっかねぇー女だな……。連れって彼氏かよ? 」
「友達です! 早く帰りたいんですから、本当に寄り道しないで下さいね! 」
「寄り道はしねぇーよ。俺も人を待たせてるんだ」
「へぇ~、彼女ですか? 」
仕返しのようにハイリアが言うと、カシムは苦笑いを浮かべた。
「ちげぇよ、俺の相棒だ。向かってるバザールに、先に行ってるはずなんだ」
カシムが言うとおり、寄り道はしなかったようで、歩いて十分くらいで、バザールにたどり着いた。
確かにこの辺りで流行っているバザールらしく、先程ハイリアがいた商店街よりも、人が多く栄えていた。
どの露店も売っている品数も多く、値段も安い。こんな穴場があったとは知らなかった。