第12章 街角の出会い
店主は顔を真っ赤にして、わなわなと震えながらハイリアを振り返り見ていた。
「お前、やっぱりっ!! てめぇーら、グルだったんだな!? 」
勘違いした店の店主が、目を血眼にして迫った。
「ち、違っ、違いますって! 」
「うるせぇ!! 弟の分まできっちり償ってもらうからな! 」
頭に血が上っているせいか、店主は聞く耳もたぬという雰囲気だった。
こんなところで、衛兵にでもつきだされたら迷惑だ。間違って本当に罪人にされかねない。
「衛兵につきだしてやる! 」
店主の男は、勢いよく腕を伸ばして、ハイリアを捕まえようと飛び込んできた。
とっさに身をかわしたハイリアは、反射的に腕を掴んで、店主を地面に投げ出していた。
―― しまった! 投げちゃった!
ざわつく商店街の空気に不穏を感じて、何も悪いことはしていないというのに、ハイリアは駆けだした。
執念深い店主は、すぐに立ち上がって後ろから追いかけてきた。
「捕まえてくれ! 泥棒だ!! 」
叫びながら、店主が追ってくる。意外と足が速い。必死にこちらも逃げないと追いつかれそうだ。
「だから、違うんだってば!! 」
小さな子どもだからって油断するんじゃなかった。
商店街の買い物客の視線は、完全に自分が盗人だと思いこんでいるものに変わってきている。このままじゃ、本当に罪人にされてしまう。
商店街から逃げるため、露店脇の間道に走りこんだ。
知らない道に戸惑ったが、そんなことを気にしている余裕はなかった。後ろからはまだ、店主がスピードを上げて追いかけてきている。
しかし、道の選択を誤ったかもしれない。
入りこんだ間道の脇道は、路地裏がどれも狭くて、体の小さな子どもしか、抜けられないようなものばかりだった。
なんとか通れる道を選んでいるが、土地勘がないだけに、曲がった道がどこへ繋がっているのか、全くわからない。
勘でどうにか道を進むが、店主は一向に諦めてくれる気配がないし、追ってくる距離はいつまでたっても変わらなかった。
奥に行けば、行くほど道はわからなくなり、結果、ハイリアはとうとう行き止まりに当たってしまった。
前も、左右も、民家の外壁に囲まれていて、もうどこにも逃げようがない場所だ。