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【マギ*】 暁の月桂

第12章 街角の出会い


駐在所に連れて行かれたら、あの子どもは確実に罰せられる。

盗まれた代金も、罰金も払うことなんてできないだろうから、おそらく肉体労働で返せということになるだろう。

下手をすれば身を売って返せということになり、奴隷行きだ。

盗みを何度も働いている子どもがいけないのはわかるけれど、罪状の理由を考えると、泣きわめいている小さな子どもが連れて行かれる光景は、見ていてとても不愉快だった。

店主に連行される男の子の泣き声に見かねて、ハイリアは仕方なく露店の店主に近づいた。

「あの、すみません。商品の代金を私が払いますので、その子を放してあげてくれませんか? 」

「なんだい、兄ちゃん。こいつの兄貴かい? 」

声をかけたハイリアを、露店の店主は鋭い視線で睨み付けた。

「違いますけれど、かまわないですよね? 」

多めに取り出した硬貨を店主へ握らせると、露店の店主は苛立ちながらも硬貨の枚数を数え、小さな男の子を放してくれた。

「ふん! 命拾いしたな坊主。もうすんじゃねーぞ! 」

急に地面に放り出された小さな男の子は、呆然としている様子だった。ハイリアが手を差し出すと、その子は急いで立ち上がり、涙を袖で拭いていた。

「大丈夫? 」

声をかけると男の子は、もう涙はとまったようで、にっこりと笑顔をハイリアに向けた。

「うん、ありがとうお兄ちゃん! おかげで上手くいったよ! 」

そう言って、駆けだして行った子どもの言葉の意味を、ハイリアは一瞬、理解できなかった。

しかし、すぐに響いてきた怒声で感づいた。

「あー、お前ら!! 何してやがる!! 」

はっとして、怒鳴る露店の店主が見つめる先をみれば、二人の子どもが男の店から商品をいくつか抱え込んで、間道へ駆け抜けて行った。

あれは、さっき道角で青ざめていた子ども達だ。

裏道に逃げ込んだ子ども達をみて、ハイリアが唖然としていたとき、助けた男の子がその道の手前で振り返り、大きな声を上げた。

「おっさんの、ばぁーか!! 兄貴、あとは頼んだぜ~! 」

あっかんべーをして、笑いながら逃げていった男の子の手には、ちゃっかり店のリンゴが握られていた。

可哀想だと思って助けたというのに、子どもにまんまとしてやられたのだ。
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