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【マギ*】 暁の月桂

第12章 街角の出会い


川辺に連なる商店を巡っていると、どの店に売られている商品も、出来映えのわりに価格がどれも高いことに気がついた。きっと税金が高いのだろう。

正規の出店より、すぐ側にある闇市の方が栄えていた。

きっと、市民たちは、毎日ぎりぎりの生活を送っているはずだ。

貴族たちは潤い、一般の市民たちは喘いでいる。

格差の拡大に、国の傾きを嫌でも肌に感じた。いったいこの国の王は、何をやっているのだろうか。

露店で、アラジンが食べてくれそうな品を探しながら歩いていたハイリアの側を、子どもが一人、息をひそめて横切っていった。

手前の青果商の露店の側まで来ると、やけにそろそろと歩き、店から隠れるように身を低くしている。

子どもは古びた服を着ていて、見るからにやせ細っていた。きっとスラムの子どもだろう。

ハイリアの腰くらいの背丈をした小さな男の子は、青果商の店主に気づかれないように、背を低くしながら果物が並ぶ棚に近づいていた。

目線の先にはリンゴがある。たぶん、盗みを働く気なのだろう。

見ないふりをしてやろうと、ハイリアは視線を外に向けた。

子どもがいた店の向かいには、美味しそうなお焼きを売っている露店があり、良い香りに足が自然に向いた。

種類も豊富で、大きさも食べやすそうだ。これなら、アラジンも少しは食べる気になるかもしれない。

いくつかに目星を付けて、笑顔を向ける露店のお姉さんに声をかけようとした時だった。

後ろの露店から、大きな男の怒声が響いた。

「こんのクソガキ!! まあーた、盗みに来やがって、今日は逃がさねぇからな! 」

振り返ると、露店の店主が小さな男の子をつまみ上げていた。

先程、露店の側で隠れていたスラムの子どもだ。真っ青な顔して、体を震わせている男の子の手には、リンゴが三つ抱え込まれていた。

「これで何度目だ? 今日こそは衛兵につき出してやるからな!! 」

店主は本気らしく、露店の従業員に店を任せると、ワッと泣き出した男の子を動けないように腕で抱え込みながら、衛兵士の駐在所まで歩き出した。

露店裏の道角では、男の子と同じくらいの背丈の子どもが二人、青ざめた顔して壁に張り付いて固まっていた。

きっとあの子の仲間だろう。二人とも今にも泣きそうな顔をしていた。
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