第12章 街角の出会い
「私って、珍しい色をしているでしょ? 幼い頃に引き取られたキャラバンでね、なめられやすいし、女だとわかると危ないからって、ずっと男装させられてたの。
だから、服は今でも、女性ものだとなんか落ち着かなくって……。一人で町に出るときは、頭に何か巻いてないと違和感があるのよ」
キャラバンの姉御から教わった、自分の身を守る一つの方法でもあった。
確かに男装しているだけで、変な人にあまり絡まれなくなったし、結構な効果があるのだ。
「そんな理由があったんですね。実は、ずっと不思議に思っていたので、やっと謎が解けました」
モルジアナがそう言ってにっこりと笑った。
「じゃあ、ごめん。ちょっと行ってくるね! アラジンのことよろしく」
部屋の奥には、座り込んでうなだれているアラジンが見えた。モルジアナも、彼を気にしながら頷く。
「はい、任せて下さい。ハイリアさんも、気をつけて行ってきて下さいね」
モルジアナに手を振って部屋をでると、ハイリアは豪華なホテルから飛び出して、バルバッドの町へと出発した。
露店が活気づいている場所は、この町に来たときにアリババの情報を探すために、三人でかなり歩き回ったから、なんとなく覚えていた。
シンのおかげで泊まっている高級ホテルの周りは、どこも富裕層目当ての店ばかりだ。
豪勢な繁華街の店は、どこも品数は多いが、値段が高い。
観光客で賑わい、食べ物が溢れているこのエリアにいると、バルバッドが荒廃していることなんて、忘れてしまいそうだった。
富裕層で賑わう広い繁華街を抜けると、ようやく一般の市民が営む飲食店街や、商店が連なる居住区に辿り着くのだが、バルバッドはここの差がひどい。
一瞬、違う国に来たのではないかと思うほど、暮らしの差を感じるからだ。
他の国でも、貴族と市民の暮らしの差は感じるものだが、バルバッドはその中でも、特に貧富の差が激しいように感じる。
市民の暮らしぶりは、はっきり言って貧しい。
商店を営んでいる市民の住宅地は、他の国のスラム街に近い。
収入を得て生活している人でも、この暮らしぶりなのだ。きっと、スラム街の生活はもっとひどいのだろう。
昨夜あったスラムの住人達は、貴族の館で食べ物を得たあと、どうしているのだろうか。やせほそった乳飲み子を思うと、心が痛んだ。