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【マギ*】 暁の月桂

第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕


艶やかに口元をつり上げて笑った玉艶は、涙を流しながらも激しい怒りをぶつけ始めたハイリアの言葉を、ただの思い込みだと否定し続けた。

ここまでボロボロに打ち負かされても、まだ自分が組織に利用されているなんていう妄信に囚われていることには驚いたが、すがりつくようなその声も、女の言葉に捻り潰されていく。

「ジュダルが我ら組織に利用されているなんて、あなたの望みが描いた幻想だわ。
 そうよね、ジュダル。あなたは自ら望んで、この組織に身をおいているのでしょう? 」

「そんなもん、わざわざ言うことじゃねーだろ? そいつだって、いい加減わかってるはずだぜ」

急に同意を求められ、面倒な気分になりながらハイリアに視線を向けると、あいつは哀しみに満ちた眼差しをこちらに注いでいたから、思わず目を逸らした。

直視できないその眼差しが、胸を煩わしく締め付ける。

「あなたは私に憎しみを向けることで、受け入れたくない事柄を見ないようにしたのよ。
 ジュダルが、我ら組織の者である事実から。あの子に傷つけられて、裏切られた現実から。あなたが昔から、我らの被験体である真実から」

「違う、そんなことない……! 」

「いつまでそうやって否定し続けるのかしら……。本当は、全部わかっているのでしょう?
 都合よく否定しようと、あなたが拒絶した事は何も変わらないって……」

「そんなこと……! 」

振るえるハイリアの声を遮るように、玉艶の言葉が続いていく。

味方など誰もいないことを諭すように。

聞き心地のいいトーンを響かせて。

少しずつ心を砕かれながら玉艶の言葉に囚われていくハイリアは、ためらいながらも揺れていた。

異を唱えるその声が小さくなり、抗うことにさえ、たじろいで黙り込んでしまう。

「もうやめなさい、ハイリア。足掻くだけ苦しいだけよ。あなたの運命なんて、初めから決まっているのだから」

「決まって、いる……? 」

「そうよ、あなたは初めから堕転する運命なの。我らの実験体として刻印を押されたあの日から……。いいえ、そのずっと前から決まっているのよ。
 あなたの生まれ故郷が滅ぶことも、その先であなたと出会った者たちが死ぬことも。あなたが裏切られてすべてを失うことも……」
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