• テキストサイズ

【マギ*】 暁の月桂

第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕


「待って……! あなたたちの主はそっちじゃない! 」

慌ててあいつが呼びかけるが、身体から漏れ出していく黒ルフどもの勢いはおさまらない。

増していく黒ルフどもの惑うざわめきに比例するように、ハイリアから一羽、また一羽と黒ルフが飛び立ち、杖へと集う。

「俺は『マギ』だぜ? ルフが俺の言うことをきかねぇはずがねーだろ。マギでもねぇおまえが、ルフを束ねられるはずがねぇーんだ! 」

「そんなことない! 黒ルフたちは、ワタシを理解して力を貸してくれたんだ」

「そうかよ、でもそいつら俺の方に来たいみたいだぜ? 」

杖先を向ければ、ハイリアの肢体に絡む闇の縞柄がみるみる剥がれ落ちていく。

「やめ、なさい……! 」

壊れ始めた魔装に苛立ったハイリアが剣を振りかざし黒炎を走らせてきたが、燃え上がった黒炎は、なぜかこちらへ届く前に小さくなって消えてしまった。

まるで攻撃を拒んだかのように消滅したその炎が消えたとたん、ハイリアの腕に刻まれた傷が深々とヒビ割れて血が滴る。

それを信じられない様子で見つめ、戸惑い固まった姿が滑稽すぎて笑えてきた。

「どうした? 早く攻撃してこいよ、ハイリア」

どうやら黒ルフをうまく扱えなくなったらしい少女に追い討ちをかけようと、ジュダルは杖先を光らせた。

「さぁーて、そろそろ、ふざけたその魔装をぜんぶ引き剥がしてやるぜ! 」

── さっさと来いよ。黒ルフども!

杖を向けて命じれば、さらに勢いを増して黒ルフが杖先に集い出す。

気持ちいい具合にハイリアの魔装から引き剥がされてくる、黒い軌跡が面白かった。

渦を巻いて飛び交うベクトルの変化した暗黒の流れも、その感触も。

離れていく黒ルフを何とか繋ぎ止めようと必死に手を伸ばす、足掻くあいつの姿さえ。

歪な黒い片翼は、引き剥がす黒ルフの数に応じて小さくなっていく。

まるで黒い羽根をむしり取られているかのように、バラバラと散らばりながら形を崩していくその光景は快感だった。

優越感が身体を満たし、血がたぎって、心が躍る。

白虎のように変じていた姿は、みるみる白獅子へと戻り、双剣に灯る炎も黒から青へと急激に色を変えていった。

高ぶる気のままにルフを引き集めれば、黒ルフとは違う、知った感触のマゴイまでが次々と引き寄せられてくる。
/ 677ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp