第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕
── そういえば、『ルフはアタシの味方になってくれる』なんてことを言っていたっけか……? だったら、俺にだって考えがあるぜ。
思いついたその方法に、思わず笑みがこぼれ出る。
「そうだな、もう終わりにしようぜ。目ぇ覚まさせてやるよ、ハイリア。ルフは味方になるだっけか? 俺とおまえじゃ、いったいどっちの味方につくんだろうな」
杖を高く掲げて、そこらを飛び交うルフどもを呼びつけた。
すぐに集まり出した黄金色の光は、赤い杖先にマゴイの塊となって膨れていくが、その勢いはまだ足りない。
「もっとマゴイをよこせよ、ルフども! おまえらは、俺のためにあるんだろう? 」
声を張り上げて、さらにルフを呼びつけた。
望んでいるのは、こんなちっぽけな力ではない。
もっと圧倒的で、強大な、差異をつけられる力だ。
思い描くその力を引き寄せるように、空間全てに意識を拡散させて揺さぶりをかけた。
中枢から末端へ。
浮かび立つこの場所から波紋を広げるように、ルフどもに意志を放つ。
とたんに、杖先に集まるマゴイの感触が急激に増し、ビィービィーと鳴きわめくルフの声が、杖先からビリビリと振動となって指先に伝わってきた。
勢いよく引き寄せられてくる重みのある黄金のきらめきが、目の奥に突き刺さるような眩しさで視界の隅から鋭い曲線を描いて走りこんでくる。
膨れ上がるマゴイの重厚な輝きと、その確かな手ごたえにほくそ笑む中、こちらが放った意志の辺縁に触れただろう目障りな黒い片翼へと視線を移すと、思った通りハイリアの翼の中で、黒ルフどもが困惑した様子でざわついていた。
アレは、黒ルフの集合体だ。
『ルフ』が『マギ』であるこちらの呼びかけに答えないわけがない。
── いつまでそっちについてる気だ? さっさと、こっちに戻ってきやがれ!
本来、こちらにつくはずの黒ルフどもを一気に奪い返してやろうと意識を向けて手繰り寄せた瞬間、ハイリアが気に入らない様子でこちらへ駆けこんでくるのが見えたが、その動きも杖を向けるまでもなくすぐに止まった。
数歩駆け込んだところで、急に表情を固めて身体を押さえ始めたハイリアの姿に思わず口角が上がる。
あいつの闇の魔装から溶け出すようにジワジワと黒ルフが溢れ出てきていた。