第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕
「どうせまた乱暴しにきたんでしょう……? 楽しい? 無理矢理、身体を重ね合わせて……」
頭を悩ませる中、じろりと見てきたハイリアの眼差しは、こちらを責めるようなものだった。
── ったく、おまえは……!
「減らず口を言うだけの元気はあるみてーだな……。おまえがそんなにして欲しいって言うなら、今すぐ溺れさせてやろうか? 」
苛立ちが募るのを感じながらハイリアの肩に手が触れたとたん、その身体がこわばったのを指先に感じ取った。
それがどうも煩わしくなって、真っ白な髪を撫でる。
長い白髪を整えるように撫でてやると、ほんの少しだがハイリアの身体のこわばりがとれるのがわかった。
ぬるい熱が手の平から伝わり、離しがたいそれが胸の奥にまで伝わってきて妙な気分になる。
「でもな、遊ぶもんが簡単に壊れちまったら、つまんねーんだよ。だから、おまえをこのままになんてできねーんだ」
胸に起こる複雑な感覚を、誤魔化すように言っていた。
言いワケしているようにも思えた。
「私が被験体だから……? 」
「おまえに死なれちゃ困るしな……」
言ったとたん、こちらの様子をうかがっていたハイリアが、泣きそうな顔して枕にうつ伏せた。
「もうほっといて……、食欲なんてないの……」
「嘘つけ、腹の虫鳴らしてたくせによぉ……」
「お腹痛いだけ……。誰かさんに、ひどいことされたから……」
「……ほんと口だけは達者だな」
呆れと同時に、胸が疼き痛む。
こいつを傷つけるたびに起こる反応が煩わしい。
誰をおとしめようと、こんなこと今までなかったというのに……。
枕に伏しているハイリアの腕を引っ張ると、ようやく埋もれていた表情がしっかりと見えた。
力強さが消えた瞳には、悲しげな色が宿っていた。
それがすぐに逸らされたことが気に入らなくて、頬を掴んで視線が合うように直させる。
「ちゃんと俺を見ろって言ったよな? おまえは全然、覚えねーのな」
顔を背けることがないようにハイリアの身体を上から押さえつけると、諦めたようなブドウ色の瞳が閉ざされた。
見ろと言ったのに、こちらを全く見ようとしないことに腹立たしさを感じて、無視できないほどに乱してやろうかと思ったその時、カサついた桜色の唇が見えてハッとした。