第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕
「よく寝るよな、おまえは……」
── まぁ、目覚めたこいつを再び眠りに落とす原因を作ったのは、俺なわけだけど……。
白い肌に残した痕跡を眺めながら、ジュダルは苦笑した。
純白の生地は、こいつにはよく似合う。
真っ白なこいつの白さが、より洗練されて。
「なぁ、知ってるか、ハイリア? さっき絨毯で飛び回ってたらよぉ、この近くにすっげー場所があったんだ。一面、赤と白の花だらけなんだぜ」
眠り続けるハイリアの髪を撫でて語りかけながら、ジュダルは微笑んだ。
芳香な甘い匂いが充満する場所だった。
決して甘すぎない、酸味もなければ苦くもない、しつこさも感じない匂い。
けれど鼻の奥を通り抜けても消えず、頭から決して離れない不思議な香りだった。
「おまえもあの場所に連れて行ってやれればいいんだけどな……。今はできねーから、なんて花かは知らねーけど、少し持ってきてやったぜ! 」
懐に隠していたその赤と白の小さな花束を取り出して、ジュダルは甘い香りに気づくように、枕元のすぐ側にそれを置いた。
服の中に入れていたせいか、花弁が裂けて壊れている花もあったが仕方がない。
バラけた花びらは、眠るハイリアの髪の上に、ちぎって散らし落としてやった。
色づいた髪を見て満足する。
「全部、終わったら、おまえもあの場所に連れてってやるよ」
── おまえが堕転して、全てが終わったら……。
「だからよぉ、早く諦めちまえ。おまえが運命を恨みさえすれば、俺が手を取ってやれるんだ……」
── そうだ。おまえが堕転さえしてしまえば……。
すべてが元に戻せなくても、傍らにおまえがいることだけは取り戻せる。
そうじゃなきゃ、嫌なんだ。