第11章 暗闇の中で
「私があなたに害を成すか疑っているんですか? そんな私があなたの国へ行こうとしているのが、気に入らないのですか? 」
「ハイリア、そういうことでは……」
口調を強めて言ったハイリアを、シンは落ち着かせるように言った。
何もかも見透かしたかのようなその眼差しが嫌いだった。
知ったかぶりで、救いの手を伸ばそうとする、その安直な行動が気に入らなかった。
「だったら、もういいじゃありませんか……! あまり詮索しないでください。嫌なんですそういうの!! 」
誰もこの苦しみをわかるはずなんてないのに。
感情が高ぶったせいか、涙がこぼれ落ちた。
こぼれだした涙を袖でぬぐいながら、ハイリアはシンに背を向けた。
泣いたところを見られるなんて最悪だった。
「……泣かせましたね」
「いや……、これは、だな……」
軽蔑するようなマスルールの声がして、それにシンドバッドがあたふたと弁解しているのが聞こえた。
「おい! こら、そこの三人! 遊んでないでしっかり警備しろ!! 」
突然、上から怒鳴り声がした。
気づけば、警備をしている館の最上階から、男が見下ろしていた。
この館の貴族だろう。体格がいいといえば聞こえが良いが、飛び出たお腹といい、体型といい、まるで豚まんじゅうのような男だった。どうやったらあんな体になるのだろうか。
「まったく、国軍の手が足りずたった三人の警備兵など、心配でメシも食えぬわ! 」
威張りながらこちらを見下している男の手には、決して離すまいと、骨付き肉が握られていた。
それを口に運んでは、くっちゃくっちゃと音を立てながら、むさぼるように食らいついている。