第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕
「正確には、ルフと同じ性質をもつ者、といったところかしら……。どうしてあんな因果な存在が生まれたのかわからない。
けれど、あの子にはこの世界の流れたるルフの性質が溶け込んでいる。そんなことは、ルフの世界に長く居座ることでもしない限り不可能でしょうに……」
にっこりと微笑み、玉艶は言う。
「でも、だからこそ、あの子のマゴイはルフを惹き寄せるわ。まるでルフが仲間を呼ぶようにね。面白いでしょう?
あの子を見つけた時のことは、今でも覚えているわ。真っ白な光のようでとても綺麗だった。
面白そうだったから、暗黒の種を植え付けたの。ルフの身を黒く染める闇の印をね」
黒く輝く八芒星が、頭に浮かんで消えた。
「ルフと同じだからかしら? あの子は、こんなにも早く染まったわ。本質が『ルフ』なんだもの、暗黒の闇に強く感化されても仕方がないわよねぇ。
あなたの側に置いたかいがあったわ。『ルフ』は、『マギ』にどうあっても惹かれる存在だもの。堕転したあなたの黒ルフがもつ暗黒の闇に誘発されたおかげで、あの子に眠っていた暗黒の種はスムーズに目覚めることができたわ。
それと同時に、あの子の中に眠っていた『ルフ』としての元来の力も目覚めたようね。すべて、あなたのおかげよジュダル」
── 俺のおかげだと……?
「ふふふっ、素敵だとは思わない? ルフに限りなく近い、我らの被験体たるあの子が、この世界の正統な金属器を手に入れて、王の資格を得たのよ。
その王が我らの元へ戻り、今まさに堕転を果たそうとしているの。
いかにソロモンの従者どもが厳選して王を選ぼうと、その王が堕転することを彼らは止められないのだわ。
この世界の流れを司るルフの化身のようなあの子が、あそこまで黒く染まろうと金属器を扱えるのだもの。きっと誰であろうと、それは変わらないわ! 」
くつくつと楽しそうに玉艶は笑う。
「あなたには感謝しているのよ。あなたが、あの王を見つけ出し、再び我らの元へ連れ帰ってきてくれたのだもの。『十年計画』の成功例たる、優良なあの被験体をね。
『十年計画』の理論は間違いではなかった! これで長らく殺さずに育て上げてきたあの子も、意味を成すでしょう。次の計画にも、心置きなく移行できる」
歪んだ女の笑い声が、いつも一人でいる白の皇子を思い出させた。