第11章 暗闇の中で
いつまでも抜け出せない暗闇が苦しくなっていた時、ハイリアは誰かに体を揺すられて目を覚ました。
薄灯りが灯る中、豪華な天蓋が見えて、安堵する。
気づけば、モルジアナが心配そうにこちらを見下ろしていた。
「大丈夫ですか? うなされていましたよ……」
「あー、ごめん……。ちょっと嫌な夢を見ていただけよ」
久しぶりにみた、昔の記憶だった。
最近はちっとも夢で見なくなっていたというのに、不安感に駆り立てられたせいだろうか。
久しぶりの悪夢に寝汗がひどかった。
「本当に、大丈夫ですか? 」
「大丈夫よ。もうすぐ作戦の時間だから起こしてくれたのでしょう? 」
「はい……」
心配するモルジアナに笑顔をみせて、ハイリアはベッドから起きあがると支度を始めた。
盗賊退治をすることになり、今夜は盗賊団が狙うと思われる場所を、二手に分かれて警備することになったのだ。
そのために仮眠をとっていたというのに、悪夢のせいであまり疲れはとれた気がしなかった。
シンの説明によれば、『霧の団』は霧深い夜に活動するのだという。
金持ちから金品を奪い、貧しい人に分け与えている『霧の団』は、民衆からは支持を得ているようで、どこかから情報が漏れているのか、国軍の手が薄い場所を狙って襲ってくるそうだ。
そこで、今夜は国軍の警備が薄い、A「豪商の屋敷」と、B「貴族の屋敷」の二つを分かれて警備し、盗賊が襲いかかってきたところを、捕らえる計画となった。
チーム分けの結果、ハイリアはB班となった。
ホテルのロビーで待ち合わせていたB班を見つけると、ハイリア達は、作戦の場所まで移動を始めた。
メンバーは、シンと、マスルールである。
モルジアナ、アラジンと三人で警備をしたかったというのに、子どもだけじゃ危ないというジャーファルの申し立てにより、チームの編成は混ぜ合わせとなったのだ。