第26章 緋色の夢 〔Ⅺ〕
「綺麗だわ。どんなに傷だらけになろうと、真っ白なあなたは赤が映えて……。でも、もう終わりにしましょう?
あなたには堕転して完成してもらわなければ、我らのために」
口元を吊り上げて玉艶が笑う。
その歪な笑みに、激しい怒りが込み上げた。
「どうしてあなたみたいな人がいるの……? あなた達のせいでどれだけの人がっ……!
ジュダルを解放してよ! あなた達さえいなければ……。全部、あなたのせいなのにっ!! 」
殴ってやりたいのに出来なくて、ぶつけるように声を張り上げていた。
睨みつけて、叫ぶことしかできないことが悔してたまらない。
「私のせい……? 本当にそう思っているの? そう思い込もうとしているのは、あなたの方じゃないのかしら」
「何が言いたいのよ! 私が間違っているとでも言いたいの?! 」
「ええ、そうよ。だってあなたは、すべてを私のせいにすることで、信じたくない事柄を否定しているだけだもの。
あなたは、ただ現実を受け入れたくないだけじゃない」
耳に深く響いた玉艶の言葉に、ハイリアは目を見開いた。
「ねぇ、ハイリアちゃん。ジュダルは今、我らの『マギ』としてあなたの前にいるわ。それをジュダルが否定したことはあったかしら? 」
「それは……」
「なかったでしょう? あるわけないのよ。それを否定したかったのは、あなたの思いだもの。ジュダルが我ら組織に利用されているなんて、あなたの望みが描いた幻想だわ。
そうよね、ジュダル。あなたは自ら望んで、この組織に身をおいているのでしょう? 」
玉艶がジュダルに視線を送ると、彼は面倒くさそうに顔をしかめた。
「そんなもん、わざわざ言うことじゃねーだろ? そいつだって、いい加減わかってるはずだぜ」
その言葉に胸がズキリと痛んだ。
彼を見つめた瞬間、すぐに目が逸らされて動揺する。
「ほら、ジュダルは嘘をついてないわ。あの子は望んで我らと共にいるの。それを否定したのは、その事実を受け入れたくなかったあなたの思いだわ」
くすりと玉艶は笑い、ためらうハイリアを見つめた。