第26章 緋色の夢 〔Ⅺ〕
せっかく、もう少しで攻撃を当てられるところだったのに、ジュダルのせいで手が届きそうだったあの女が遠くなっていく。
「お願いだから、ワタシの邪魔をしてこないで……! 」
怒りがこみ上げて身体にまとう闇が湧き上がった。
「だったら俺を倒していけよ。殺し合いがしたいんだろ? まずは俺が相手になってやるぜ、ハイリア! 」
勢いよくジュダルの杖先から放たれた稲妻を目に捉えて、黒い炎を解き放つ。
双剣から燃え上がった黒炎は、眩い雷光をタダのきらめきに変えてルフへかえした。
熱風に舞い上がるように飛び散ったルフをみて、ジュダルが目を輝かせる。
「ははっ、おもしれぇ! 魔法を無力化できんのか? 」
「そうよ、だから邪魔しないで! 」
「けど、それもどうせ魔法と同じだろ。無力化できねーまでに、撃っちまえばどうだ! 」
連続してジュダルの杖から雷が放たれる。
鋭い光の弾丸となったそれがいくつも襲いかかり、瞬く間に迫る雷撃の速さに驚愕した。
従者たちの連続魔法とは、まるで違う。
乱雑して放たれるそれを炎でルフにかえすが、解いた時にはすぐに次の稲妻が目の前に迫る。
── マゴイの組み替えが早い!
一つ、一つの雷撃を相手にするのでは追いつかない。
迫る方向を見定めて黒炎を大きくさせて雷撃を振り払った。
「おらおら、まだあるぜ! 」
次々と放たれる稲妻が光り、四方八方から一気に迫る攻撃に焦りを感じた。
── くっ、数が……!
いくら黒炎で雷撃を振り払っても、攻撃の手が止まない。
ルフから集められるマゴイはジュダルに尽きることなく集い、新たな雷を生み出してこちらに迫る。
乱れ迫る雷光は多すぎて、すべての動きはとても読み切れない。
炎で帰したルフのきらめきに混じって、黄色い火花が空に散っていた。
魔法をルフへかえす反応が鈍いのようだ。
乱射されるすべての攻撃を受け流そうとするうちに、炎に宿すマゴイの命令が粗くなっているのかもしれない。
ルフへかえりきらずに散った稲妻の火花が、わずかに足元をかすり、痺れるような痛みが走った。
── このままじゃ、いずれ避けられなくなる!
戦況を変えようと、黒の炎を高く燃え上がらせて前方に火の壁を作る。
雷撃の弾丸がそこにいくつもぶつかり当たって、ルフのきらめきが弾けるように飛び散った。