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【マギ*】 暁の月桂

第26章 緋色の夢 〔Ⅺ〕


青い蛇たちは、氷刀の軌跡をさかのぼって牙をむき、ボルグさえ突き抜けて魔法を起こした従者たちへと噛み付いていく。

その身についた炎は消えない。

全身を青に輝かせた彼らが倒れこみ、燃えた抜け殻から転がり落ちた人形が、カラカラと音を鳴らしていた。

「手を出してくるなら、みんな消すわよ! 」

広間にまだ残る覆面の従者たちをじろりと睨みつけると、萎縮した気配を感じた。

「なかなか手強いわね。本当に一人でも、この人数に対処できてしまいそうだわ。
 でも、関心が逸れてしまうのは良くないんじゃないかしら? あなたの大事な『マギ』が傷つくわよ」

玉艶の笑う声が聞こえてジュダルを見れば、防壁魔法もできない横たわる彼に向かって、鋭い氷の刃がいくつも落ちてきていた。

── そんな!?

いくら非道な組織でも、ジュダルには攻撃しないだろうと思っていたから油断した。

急いで脚に力を入れて飛び込み、湧き立たせた炎で氷刀を囲み溶かしつくす。

どうにか落ちる前に冷たい刃を全て消し去って、玉艶を睨みつけた。

「ジュダルをなんだと思ってるの!? 」

「我らの『マギ』よ。大切なね」

当たり前のようにそう言って笑った、玉座に腰掛けるイビツな女にふつふつと怒りが湧き上がる。

「アナタだけは絶対に許さない。必ずワタシの手で消し去ってヤル! 」

「あら恐い。でも、あなたは何もできやしないわ。だってあなたは、幼子の頃と何も変わっていないもの。炎の中で泣き叫んでいたあの時と……」

にんまりと笑ったその姿に記憶にある闇の女が重なり合い、激しい憎しみの炎がこみ上げた。

「やはりオマエは……! 」

── 許サナイ、ユルセナイ! 憎くてタマラナイ! 彼をオトシメテ、家族を殺シ、ワタシから何もかも奪ったオマエが……!

「オマエさえ、イナケレバ!! 」

黒い感情が支配するのを感じながら、剣に灯した火炎へマゴイを送る。

「集え、ワタシに! 暗黒なる闇の衣となり、我が力となれ! 」

剣を高く掲げて呼びかけた瞬間、闇が引き寄せられてきた。

青の火炎に集うのは、先程、闇の球体から溢れ出た黒ルフたちだ。

火を喰らうように次々と集まった黒ルフたちが中へ吸い込まれて、剣先に灯る炎が黒く変色する。
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