第26章 緋色の夢 〔Ⅺ〕
鍵のかかっていない扉を開けて薄暗い廊下に出ると、部屋の外はまだ静かだった。
追手が来るのは時間の問題だろうけれど。
『行くのか? 』
闇の巨鳥の声がした。
「ええ、決めたことだから……」
周囲に警戒しながら、ハイリアは道を歩み始めた。
道は知らないけれど、場所はわかっていた。
黒ルフが呼んでくれるから。
こっちだと。
だから、その場所を目指す。
暗い闇の奥。
まだ遠いけれど、そこに黒ルフが集う大きな黒点がある。
「あそこに、あの女がいる……」
そうあの女が。
壊すべき対象が。
「待っていなさい、ワタシが……」
── アナタを殺シテあげるから……。