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【マギ*】 暁の月桂

第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕


「やっぱおまえ、欲しいんじゃん。やせ我慢しやがって……、ほんとおまえって可愛くねーよな」

水差しを手に、水を口に含ませると、身体を押さえつけるジュダルが再び迫った。

無理矢理、口づけを交わされて、また水が流れ込んでくる。

拒絶できずに飲み干してしまう喉は、意志とは裏腹にさらにそれを欲しがっているのだとわかった。

それがとても浅ましいことのように感じて、涙が滲む。

「ほら、もう飲んじまった。もっとほしいかよ? 」

「いらないっ……! 」

「あ、そう。じゃー、おまえの身体に聞いてみような? 」

「やっ……! 」

抵抗も虚しく、スープを口に含ませたジュダルに口づけを交わされる。

舌先から伝わる、まろやかな甘さと塩味に美味しいと思ってしまう自分が嫌だった。

ゴクリと飲み干してしまって愕然とする。

「また飲んじまったな……。ほんと嘘つきだよな、おまえって。でも、身体は嘘つけねーみたいだぜ? どうする、もっといるか? 」

上から面白そうに覗き笑うジュダルに、何度も首を横に振るう。

「いやだ……、もういらないっ……! 」

「さぁ、どうだか……。試してやるよ」

望まないのに、ジュダルに身体を押さえつけられて、何度も口づけを交わされた。

枯渇した喉に押し込まれる水分は、身体に染み渡るように奥へ消えてしまう。

冷たい水も、まろやかなスープも……。

嫌なのに、いつしか身体は抵抗をやめていた。

与えられるものを得ようとむさぼっているのは、自分の方だ。

求めているのは自分なのだと、自覚させられて悔しかった。

触れる柔らかな感触に吸い付いて、渇いた心を埋めようとしているみたい。

何をしたって埋まるはずなんてないのに。

「うまかったかよ、ハイリア? ほら、全部飲んじまったぜ」

空になったスープの受け皿を、ジュダルに見せつけられて涙が溢れ出た。

「よかったな。これでおまえは、しばらく死なねーな」

満足そうに微笑んだ、悪魔のような彼の笑顔に胸が痛んだ。

ずきん、ずきんと何か黒いものが迫る感じがする。

「面白い……? こんなことして……」

「おもしれぇーよ、おまえを虐めんのは。生意気なおまえが俺を恨んじまう瞬間を、早く見てみてーからな」

口元をつり上げて、楽しげに笑ったジュダルが見えたとたん、ぞわりと激しい闇の感情が湧き上がった。
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