第10章 食事会での迷い
「…………やりましょう」
一番に、言い出したのはモルジアナだった。
「暗黒大陸行きの船を止めている原因も、『霧の団』だからです。国を騒がせている盗賊団を倒せば、船も動くようになるかもしれません。
ハイリアさんが行きたい、シンドリア行きの船も同じ状況ですから、盗賊団を倒せばいいのでしょう」
そう言って、モルジアナはハイリアをちらりと見て、シンドバッドへと視線を戻した。
「それに、この方は、バルバッド王とも親交があるようです。問題を解決すればアリババさんを探すのに、国から助力を受けられるかもしれません」
はきはきと言うと、モルジアナは、シンを強い眼差しで見据えた。
「人捜しをしているんです。王様に頼んでくれますよね」
物怖じしないモルジアナに、シンは感心しているようだった。
「もちろんだ。バルバッド国王にかけあった上で、国中を捜そう。さらに、暗黒大陸行きの船と、シンドリア行きの船も、俺が責任を持って手配をするよ。それでどうだい? 」
シンが差し示した提案に、モルジアナと、アラジンが顔を見合わせて、大きく頷いた。二人の意志は決まった。
あとは自分の返答を待つだけなのもあって、自然と視線はハイリアの元へと集まった。
この問題を解決すれば、モルジアナは故郷へ帰れるだろう。
アラジンも『アリババくん』を国の力を借りて捜せるのだ。
自分だって望んでいたシンドリアへの道が開く。
言葉だけ聞けば良いことづくしだというのに、恐れていることばかりが頭に浮かんだ。
もしも、居場所が知れてしまったら、ここまで逃げてきた意味は全て無くなってしまう。
災いの中心には、いつも奴らの影がいた。今回も奴らが、関係している可能性だってある。
争いの戦禍に引き寄せられるように、アイツもまた現れるかもしれない。
そしたら、またすべてが壊されてしまう。
平穏の望みなど、彼にとってはどうでも良いことなのだから。
迷いが渦巻いて、すぐに答えなど出せなかった。